相続登記義務化のポイント
- 法改正により相続登記が義務化される
- 令和6年4月から施行
- 怠ると10万円以下の過料の可能性
- 過去の相続も義務化の対象(遡及適用)
2021年に「相続登記を義務化する法案」が可決・成立しました。義務化される背景には、所有者がわからない土地の増加を解消する目的があります。
相続登記義務化の背景
相続登記とは、土地や建物など不動産の所有者が死亡したときに、相続人に名義を変更する手続きのことをいいます。これまでは任意だった相続登記が、2024(令和6)年4月から義務化されます。
所有者不明の土地・建物の管理や利用は非常に難しいため、公共事業や災害対策の妨げになるケースが多いです。開発を進めるためには、不動産登記簿に記載されている土地の所有者との交渉が必要です。しかし、所有者不明土地では、その交渉ができません。
2011年3月の東日本大震災の被災地でも、所有者不明土地が問題となりました。被災した住民を津波から守るため、安全な高台の土地を市町村が確保しようとしましたが、長い間相続登記がされていない土地が多く存在していたことが判明しました。
所有者がわからない土地が増える要因のひとつに、これまで相続登記の手続きが義務化されていなかったことがあげられます。そのため、2021年に「民法」と「不動産登記改正法」の改正が行われ、2024年4月から施行されることとなりました。
売却、賃貸などの不動産取引の支障や周辺環境の悪化につながる
不動産登記簿で所有者が不明の土地・建物は、その同意が得られないため、売却・賃貸などの不動産取引ができません。隣接する土地の所有者が不明で、境界確定ができずに売却ができないケースなども起こり得ます。
それ以外にも、所有者不明土地では、老朽化した危険家屋になってしまったり、ゴミの不法投棄や草木が生い茂ったりして管理不全の状態になると、周辺住民の迷惑になります。村内の景観や防犯、衛生面も問題となり、地価も下がってしまいます。改善を求めたくても所有者が不明のため、対処ができない状態です。
相続登記義務化の内容
相続登記の義務化に関して、わかりやすくまとめました。期限や罰則についても内容を確認してください。
相続登記の申請期間は3年以内
相続人が相続する財産に、土地や建物があると「知ったときから」(一般的には被相続人が亡くなった日)3年以内に相続登記をすることが義務化されます。
また、正当な理由なく3年以内に相続登記を放置した場合は、罰則として「10万円以下の過料」に処されます。
※「過料」とは、刑罰ではなく違反者に課す金銭納付命令です。
「期日を超える正当な理由」がある場合には、罰則には該当しないとされています。
- 相続人が多数の場合、関係書類や相続人の確定に多くの時間がかかる場合
- 相続人の健康状態がよくない等の事情がある場合」
相続人申告登記(仮)が創設
相続人が複数人いる場合で、遺産分割協議がまとまらず、3年以内に相続登記ができないケースを想定し「相続申告登記(仮)」が創設されます。
「相続の開始」「土地や建物等の不動産の登記名義人の相続人であること」以上の2点を、相続人申告登記により法務局に申請することで、「相続登記の義務を履行したもの」と見なされる制度です。
過去の相続も登記義務の対象になる
相続登記義務化の施行日は、2024年4月です。この日よりも以前に相続が発生していた場合、「過去の相続分もさかのぼって適用(遡及適用)となります」
下記のいずれか遅い日から3年以内に相続登記をする必要があります。
- 施行日
- 相続開始があったことを知り、不動産の所有権を取得したことを知った日
つまり、過去に相続した土地・建物も登記義務の対象になるので、未登記の不動産がないか確認しておきましょう。
相続登記は自身でもできる
相続登記は専門家である司法書士に依頼することが一般的です。しかし、複雑な相続でなければ、ご自身でも手続きは可能です。以下のようなケースでは、複雑な手続きは不要です。
- 相続人どうして紛争がない
- 相続人全員の意思確認が可能
- 相続手続きに必要な書類が揃っている
相続登記を司法書士に依頼した場合には費用がかかります。ご自身で手続きをすれば、その費用を節約できます。必要書類を入手する手間はかかりますが、時間と状況が整って入れば相続登記の手続きはご自身ですることも可能です。
相続登記は何度も経験することではないかもしれませんが、トラブルや罰則を避けるためにも、相続登記について理解し、事前に準備しておきましょう。

